医療の知恵袋
~目で見る市民公開講座~
2023年12月
2023年12月
はじめに
私は脊椎(せきつい)外科を専門とし、当院に赴任してから20年、背骨やその中を通る神経の病気、脊椎・脊髄(せきつい・せきずい)疾患の診療を行っています。
今回のテーマ腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアは、整形外科の中でもよく知られている病気です。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。痛みが強く、手術が必要だというイメージがあるかもしれませんが、2018年に新しい治療法が登場しましたので、ご紹介いたします。
私は脊椎(せきつい)外科を専門とし、当院に赴任してから20年、背骨やその中を通る神経の病気、脊椎・脊髄(せきつい・せきずい)疾患の診療を行っています。
今回のテーマ腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアは、整形外科の中でもよく知られている病気です。
皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。痛みが強く、手術が必要だというイメージがあるかもしれませんが、2018年に新しい治療法が登場しましたので、ご紹介いたします。
腰椎椎間板ヘルニアとは
そもそも、ヘルニアとは、体内の臓器が本来あるべき位置から飛び出てしまった状態を指します。
背骨には椎体(ついたい)と呼ばれる骨の部分と椎間板という軟骨の部分があります。
椎間板は、中心にあるゼリー状の髄核(ずいかく)と、それを取り囲む線維輪(せんいりん)と呼ばれる線維の層で構成され、背骨をつなぎ、クッションの役目をしています。線維輪に亀裂が入り、髄核が周囲に飛び出てしまった状態をヘルニアといいます。
例えると、アンパンの皮が破れて、中のあんこが外に飛び出た状態です。
線維輪を飛び出た髄核が後ろにある神経根を圧迫すると、痛みやしびれなどの症状が現れます。
椎間板を上から見た図
症状
代表的な症状は、腰痛と、坐骨神経痛ともいわれる下肢痛(おしりから足にかけての痛み)やしびれです。
症状が進むと、足に力が入らない、つまずきやすくなるなどの運動障害が起こります。また、残尿感や便が出にくいなどの膀胱直腸障害が起こることもあります。
原因
原因は特定されていませんが、加齢または姿勢や動作などにより椎間板に負荷がかかるためと考えられています。
また、腰椎椎間板ヘルニアになりやすい年齢は20~40代、男女比は約2~3:1といわれています。
治療法~新しい治療とは~
腰椎椎間板ヘルニアの治療法は、従来からある保存療法、手術療法、そして新しい治療法である椎間板内酵素注入療法の大きく3つに分けられます。
ヘルニアの位置や程度、症状などによって選択できる治療法は異なります。
出典:科研製薬株式会社 腰椎椎間板ヘルニア疾患ポスター
腰椎椎間板ヘルニアでは、まず保存療法を行います。
コルセットで腰を固定したり、痛み止めの飲み薬や神経ブロックという注射を使って痛みを和らげたりします。痛みが落ち着いた後にはリハビリテーションを行うこともあります。
保存療法の効果が少ない場合や患者さんの早く治したいという希望があった場合に、手術を行います。手術では、背中側の皮膚を切ってヘルニアを取り出すことになるため、不安に思われる患者さんも多いです。
そのため、新しい治療法である椎間板内酵素注入療法が注目されています。
新しい治療「椎間板内酵素注入療法」
とはどんなもの?
椎間板内酵素注入療法は、保存療法と手術療法の中間の治療法といえます。
椎間板の中の髄核に、タンパク質を分解する酵素「コンドリアーゼ」を注射し、ヘルニアを小さくして神経への圧迫を減らすという方法です。
この酵素の力で、髄核にある保水成分(水分が多く含まれる軟骨成分)が分解されて、膨らんでいた水風船から水が抜けてしぼむようなイメージです。
神経への圧迫が減ると痛みやしびれが和らぎますが、酵素の効果が出始めるまで2~4週間程度かかります。ヘルニアが小さくなるまでには3カ月以上かかります。
7~8割の患者さんで痛みの改善がみられます。また、手術より患者さんの体への負担が小さく、日帰りで行うことができます。
神経への圧迫が減ると痛みやしびれが和らぎますが、酵素の効果が出始めるまで2~4週間程度かかります。ヘルニアが小さくなるまでには3カ月以上かかります。
7~8割の患者さんで痛みの改善がみられます。また、手術より患者さんの体への負担が小さく、日帰りで行うことができます。
椎間板内酵素注入療法は、まずレントゲン台に横になり体の位置を調整します。X 線でヘルニアのある椎間板を確認しながら、針を刺す場所を決め、コントリアーゼを注射します。
椎間板内酵素注入療法の有効例
- 出典:
- 生化学工業(株)社内資料
『紹介する症例は臨床例の一部を紹介したも
ので、すべての症例が同様の結果を示すわけではない』
まとめ
- 新しい治療として紹介した椎間板内酵素注入療法は、従来の保存療法と手術療法の中間の治療法といえます。
- 7~8割の患者さんに痛みの改善がみられる治療法です。
- 当院でも約180名の患者さんにこの治療を行い、良好な結果が得られており、手術をしなくて済む患者さんが増えています。
- 坐骨神経痛のようなおしりから足にかけての痛みやしびれがある場合は、整形外科でご相談ください。
「医療の知恵袋~目で見る市民公開講座~」
について、
閲覧いただきありがとうございました。
皆さんにとって、病気や健康を考える良い機会となれば幸いです。
(公開資料は2023年12月20日時点の情報です。)
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