医療の知恵袋
~目で見る市民公開講座~
2023年10月
2023年8月
はじめに
婦人科の手術は、20年ほど前までお腹を大きく切る開腹手術が一般的でしたが、近年は医療機器の発達により、傷の小さな手術(低侵襲手術)が多く行われるようになりました。
今回は、婦人科の傷の小さな手術についてご紹介します。
傷の小さな手術(低侵襲手術)とは
お腹を大きく切ることなく、5~12mmの小さな穴を3~5カ所開け、内視鏡(カメラ)を挿入し、映し出された画像を見ながら行う体に負担(侵襲)の少ない手術のことです。婦人科では、腹腔鏡手術、ロボット支援手術がこれにあたります。
開腹手術に比べて、手術の傷が小さいことはもちろん、術後の痛みが少ない、入院期間が短い、早期に社会復帰ができるなどのメリットがあります。
最近はお腹に全く傷が残らない手術(vNOTES、子宮鏡手術)もあります。
低侵襲手術の実績
当院の婦人科では、2007年に低侵襲手術を導入し、現在では年間約280件の低侵襲手術を行っています。子宮筋腫や卵巣のう腫などの良性腫瘍に対する手術では、全体の約8割を占めています。
大きな子宮筋腫や卵巣のう腫も、薬を使用したり、中に含まれる体液を抜いたりして小さくし、低侵襲手術を行うことが可能です。
日本産婦人科内視鏡学会認定の腹腔鏡技術認定医が2名在籍しており、安心して手術を受けていただける体制をとっています。
腹腔鏡手術とは
お腹に5~12mmの穴を3~4カ所開け、炭酸ガスで腹部を広げて、挿入したカメラの画像をテレビモニターで見ながら、鉗子(先端に電気メスやハサミなどがついた特殊な手術器具)を用いて病変を切除する手術です。
当院の婦人科では、年間約210件の腹腔鏡手術を行っています。
主な対象疾患
子宮筋腫、子宮脱、良性卵巣腫瘍、子宮外妊娠などの異所性妊娠、子宮腺筋症、子宮頸部異形成、子宮内膜増殖症、卵管水腫、
早期子宮体がん
ロボット支援手術とは
腹腔鏡手術と同様に、お腹に5~12mmの穴を4~5カ所開け、カメラと鉗子を挿入して病変を切除する手術です。鉗子はロボットの腕(ロボットアーム)に付いており、医師は患者さんから少し離れた操作ボックスで、このロボットアームを遠隔操作して手術を行います。
ロボットで手術をされると聞くと少し怖い気がするかもしれませんが、3D画像で患部を立体的に写し出し、視野を6~10倍にも拡大できるため、従来のテレビモニターよりも細部まではっきりと見ることができます。
また、鉗子は人間の手の関節のように自在に曲がり、手振れ補正機能も付いているため、精度の高い繊細な手術が可能です。新しい手術ですが、より正確で安全な手術といえます。
主な対象疾患
子宮筋腫や子宮腺筋症などの子宮良性疾患、早期子宮体がん、骨盤臓器脱(子宮脱・膀胱脱)
※患者さんの病状によって、腹腔鏡手術や開腹手術が適応となる場合があります。
ロボット支援手術の実績
当院の婦人科では、2019年5月からロボット支援手術を導入し、現在では年間約40件のロボット支援手術を行っています。
術者資格を保有している医師は5名在籍しています。
ロボット支援手術の実績
手術支援ロボット ダヴィンチのご紹介
当院のロボット支援手術は、ダヴィンチXiとダヴィンチXを使用しています。
最新のダヴィンチXiは、天吊りの支点から4本のアームが配置されており、それらが回転することにより、方向の異なるアプローチで手術が可能です。アームが細く、アーム同士の干渉も少ないため、狭い視野でも手術が容易です。カメラの大きさは8mmで、お腹に開けた小さな穴のどこからでもカメラを挿入できます。
他の診療科でもロボット支援手術が行われていますが、ダヴィンチを3台保有しているため、同時間に複数の患者さんの手術が可能です。
お腹に傷が残らない手術
お腹に全く傷が残らない手術(vNOTES、子宮鏡手術)とは、カメラや鉗子などの医療器具を全て膣から挿入し、摘出した病変も膣から取り出す手術です。婦人科の内視鏡を用いた手術の中では最も低侵襲といえます。
対象となる症例は限られますが、お腹に全く傷が残らず、術後の痛みも少ないため、患者さんの負担を大きく減らすことができます。ケロイド体質(傷跡が赤く盛り上がりやすい)の方でも受けていただけます。
vNOTESとは
腟の1番奥にある子宮頸部の近くの腟壁を切開し、そこからカメラや鉗子などの医療器具を挿入して行う腹腔鏡手術です。癒着(本来はくっついていない器官や組織が炎症などによりくっついてしまうこと)のある場合や出産歴のない方、大きい子宮や子宮筋腫が頸部にある方は行えません。
当院の婦人科では、2022年から導入しており、現在までに5件の実績があります。
主な対象疾患
子宮筋腫
子宮鏡手術とは
子宮の入り口からカメラを挿入し、映し出された画像を見ながら病変を切除する手術のことです。病変が子宮の内側にある場合に限定されますが、手術時間も比較的短く、術後の痛みも少ない手術です。
当院には子宮鏡技術認定医がおり、年間約30件の実績があります。
主な対象疾患
粘膜下子宮筋腫(約3cmまで)
子宮内膜ポリープ
まとめ
- 傷の小さな手術とは、体に負担の少ない(低侵襲)手術のことで、婦人科では、腹腔鏡手術、ロボット支援手術、子宮鏡手術があります。
- 低侵襲手術は、手術の傷が小さいことはもちろん、術後の痛みが少ない、入院期間が短い、早期に社会復帰ができるなどのメリットがあります。
- 今回ご紹介した手術の中で、どの手術が最適かは、患者さんの病状や年齢などによって異なります。また、手術だけでなく、内服治療などさまざまな治療方法があります。
当院では、患者さんに合った治療方法を考え、ご説明し、患者さんにご納得いただいた上で治療を受けていただくことを大切にしています。不安なことや手術の方法について聞きたいことがあれば、いつでも安心してご相談ください。
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について、
閲覧いただきありがとうございました。
皆さんにとって、病気や健康を考える良い機会となれば幸いです。
(公開資料は2023年10月20日時点の情報です。)
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