下部消化管
診療責任者
- 廣川 高久
-
- 下部消化管外科部長
患者の皆さまへの一言
代表的な対応疾患
- 大腸がん
- 直腸がん
- 炎症性腸疾患
- 肛門疾患
診療内容
下部消化管外科では大腸がんに代表される悪性疾患をはじめ、炎症性腸疾患、肛門疾患(痔など)、さらには、大腸憩室穿孔や急性虫垂炎など急性腹症の診療を行っています。患者さんに優しい負担を心がけており、多くの症例を小さな傷で痛みの少ない腹腔鏡下手術で行っています。
- 大腸がん
大腸がんは大腸粘膜から発生する悪性腫瘍です。大腸がんは大きく結腸がんと直腸がんに分類されます。また、病変の大きさ、リンパ節への転移、他臓器への転移によってStage 0からStage IVに分類されます。大腸内視鏡で切除できなかった大腸がんは手術が必要になります。全ての治療方針は、患者・家族の皆さまと十分に相談し寄り添って、患者さんに最も適した治療が行えるよう常に心がけています。
1.結腸がん
大腸がんの中でも盲腸からS状結腸にできたがんを結腸がんと呼びます。結腸がんに対する手術には結腸右半切除、S状結腸切除などがあります。大腸がんはリンパ節への転移を起こす可能性があるため、病気のある部分の腸に加え転移の可能性があるリンパ節も一緒に切除します。切除した後は腸と腸をつないで便の通り道を作り直します。
2.直腸がん
直腸がんは骨盤の中の大腸にできた病気です。結腸がん同様、腫瘍のある腸管と転移の可能性があるリンパ節を一緒に切除します。直腸の周りには多くの神経があり、神経障害によって生じる性機能障害や排尿障害が起きることがあります。後に示すロボット支援手術は、深い骨盤の中を手術する直腸がんに対してとても有用です。先ほど述べた合併症の回避にとても機能を発揮します。
直腸がんが肛門付近に発生することもあります。そのような場合は肛門ごと切除し、人工肛門を作る必要が出てきます。おおよそ肛門から指で届く程度の部分にできた進行がんには直腸切断術が必要となってきます。近年、肛門近くの病変でも肛門を極力温存するようになってきました。その手術方法として括約筋間直腸切除術(intersphincteric resection:ISR)があります。肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋の二つがあり、外肛門括約筋を残すことで肛門機能を保つ方法です。肛門機能の低下はありますが、日常生活は可能な状態に戻ることがほとんどです。ロボット支援手術は、腹腔鏡手術より肛門温存率が明らかに高いデータもあります。当院では適応を的確に判断し、極力肛門を温存するようにしております。
3.ロボット支援手術
ロボット支援手術が直腸がん、結腸がんともに保険診療で行えるようになりました。ロボットの特徴として解像度の高い3D画像、腹腔鏡にはなかった多関節機能などがあります。骨盤内の奥深く狭いところの直腸がん手術には、ロボット支援手術が非常に適しています。また、手ぶれ防止機能などもあり、結腸がんに対してもより精緻な手術が可能です。
これらの利点から当院では直腸がん、結腸がんの全例をロボット支援手術の対象としております。手術支援ロボットダヴィンチ3台体制(da Vinci Xi2台とda Vinci X1台)で、県内でも結腸・直腸領域で数名しか認定されていない内視鏡外科学会の定めるロボット支援手術のプロクター認定(ロボット支援下内視鏡手術の手術手技において、術者として標準的な技量を取得し、他者によるロボット支援手術を円滑かつ安全に指導できる指導者を認定するもの)を受けた医師2名が在籍し、安全で質の高いロボット支援手術提供しております。
また腹腔鏡下手術でも、安全かつ高い質(根治性)で提供できるよう、日本内視鏡外科学会が定める大腸領域での技術認定医(内視鏡下手術を安全かつ適切に施行する技術を有し、かつ指導するに足る技量を有していることを認定するもの)2名を中心に手術を行っております。
大腸がんは高度に進行すると他臓器に浸潤したり、遠くの臓器やリンパ節に転移したりします。特に直腸がんでは狭い骨盤の中に膀胱や子宮など多くの臓器があり、それらの臓器へ浸潤を起こしやすい状況にあります。また、お腹の中に再発した場合、多くは他の臓器に食いつくように再発します。他臓器に転移や再発がある場合も、大腸がんは手術で切除すれば根治できる可能性があります。逆に切除しなければ治りません。当院では”がんを克服”をモットーに他臓器合併切除などの拡大手術を積極的に行っています。また、抗がん剤や放射線治療を組み合わせることでさらに再発を抑えるよう集学的治療に取り組んでいます。他病院で切除ができないと診断された方でも、当院で切除できるかもしれません。もし、そのような診断を受けた方がいらっしゃいましたら一度ご来院ください。- 炎症性腸疾患
- 内科的治療に抵抗性の潰瘍性大腸炎に対して外科的治療を行っています。腹腔鏡下手術を施行して、小さな切開創で大腸全摘出術、回腸―肛門吻合または回腸―肛門管を行っています。
- 結腸憩室症
- 近年、食生活の変化や環境要因などで特に左側結腸(S状結腸など)の憩室(けいしつ)症が増えています。膀胱と交通したり穿孔を起こしたり、狭窄(きょうさく)で排便時に痛みが生じたりする場合は積極的な手術適応があり、対応しています。
- 肛門疾患
- 主として内痔核(いぼ痔)、痔瘻、直腸脱に外科的治療を行っています。痔核については、保存的治療(薬物療法)、注射(ALTA)での治療、手術療法などさまざまな治療を行っています。 治療方針については、肛門疾患診療ガイドラインに基づき標準的な治療を提供しております。また、直腸脱については、カウンセリングの後、経肛門的手術や腹腔鏡下直腸固定術などを導入しております。大腸・肛門専門の外来を開設していますのでご相談ください。
- その他一般外科
急性虫垂炎は全例腹腔鏡下手術で対応しています。
診療方針
各疾患に対してガイドラインに沿った医療を基本方針としております。先進的な医療・技術を常に取り入れながら、十分なご説明の上に同意をいただきながら診療を行っています。
診療実績
疾患別の治療・手術・検査実績(件)
2021年 | 2022年 | 2023年 | ||
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大腸がん | 結腸がん(合計) | 103 | 104 | 99 |
腹腔鏡下結腸手術 | 91 | 48 | 9 | |
ロボット支援結腸手術 | - | 47 | 85 | |
直腸がん(合計) | 64 | 49 | 76 | |
腹腔鏡下直腸手術 | 10 | 3 | 4 | |
ロボット支援直腸手術 | 49 | 43 | 68 |
医師紹介
氏名 | 役職 | 出身大学 | 医師免許取得年 | 主な専門領域 | 指導医・専門医・認定医など |
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木村 昌弘 | 副院長 外科統括部長 がん総合診療センター長 |
名古屋市立大学 | 1989年 | 消化器外科 |
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山本 稔 | 消化器外科部長 | 名古屋市立大学 | 1993年 | 消化器外科、 肝胆膵外科 |
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宮井 博隆 | 上部消化管外科部長 | 名古屋市立大学 | 2000年 | 消化器外科、 上部消化管外科 |
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廣川 高久 | 下部消化管外科部長 | 山梨医科大学 | 2003年 | 消化器外科、 下部消化管外科 |
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今藤 裕之 | 消化器外科医長 | 名古屋市立大学 | 2006年 | 消化器外科 |
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上野 修平 | 消化器外科医長 | 名古屋市立大学 | 2010年 | 消化器外科 |
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加藤 匠 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2020年 | 消化器外科 | |
中澤 充樹 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2021年 | 消化器外科 | |
庭本 涼佑 | 消化器外科医員 | 名古屋市立大学 | 2021年 | 消化器外科 | |
田中 守嗣 | 顧問 | 名古屋市立大学 | 1981年 | 消化器外科、 肝胆膵外科 |
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小林 建司 | 消化器外科顧問 | 名古屋市立大学 | 1986年 | 消化器外科、 下部消化管外科 |
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