医療の知恵袋
〜目で見る市民公開講座〜
2021年10月
2021年10月
はじめに
頭の怪我は別として、ひとくちに「頭が痛い」「頭痛」といいましても、さまざまなものがあります。
刈谷豊田総合病院脳神経内科の丹羽央佳です。
今回は、頭痛について解説いたします。
頭痛の種類
なんでもない頭痛
- アイスクリーム頭痛
- 二日酔いの頭痛
これらは頭痛では死にませんが、アルコール中毒となると危ないかもしれませんね。
くれぐれもご自愛ください。
なんでもなくはないが、命に危険は無い頭痛
- 片頭痛・緊張型頭痛
- 緊張型頭痛
- 三叉神経痛
- 緑内障
- 副鼻腔炎 など
脳の病気ではなくとも頭痛を生じることがあります。
これらの病気で命を落とすことはありませんが、健康上の問題があるので対処が必要です。片頭痛については後に触れます。
三叉神経とは?
脳から出て、3本の枝のように分岐し、顔の皮膚全体に広がっている神経
なんでもなくはなく、命に危険がある頭痛
- くも膜下出血
- 脳出血
- 髄膜炎 など
これらは急いで対処しなければなりません。
頭痛=脳の病気?
緑内障(眼圧が上がる病気)や副鼻腔炎(蓄膿症)から分かるように、頭が痛いからといって、脳の病気とは限りません。
逆に、頭が痛くないからといって、脳の病気でないとは限りません。多くの脳梗塞では、頭痛の症状はありません。
痛みセンサーは体中に張り巡らされていて、センサーが刺激されると「痛い」と思います。 しかし、脳そのものには、そのセンサーが無いのです。
※脳への血管が裂けてしまって起きる脳梗塞(脳血管解離)の場合は、血管には痛みセンサーがあるので痛みを感じます。
「頭痛だから脳の病気!」と必ずしも怖がることではありませんが、もちろんチェックは必要です。危険な頭痛のチェックについては後ほどお伝えします。
「なんでもなくはないが、命に危険は無い頭痛」について
緊急性はありませんが、対処は必要です。ここでは片頭痛について詳しく説明します。
全世界で約10憶人が罹患(りかん)しているといわれている「片頭痛」では、頭痛により生活が制限され、生活の質が低下してしまいます。
あの著名な小説家である芥川龍之介も片頭痛患者でした。当時は薬がありませんでした。作者の死後に発表された「歯車」
(晩年の作者自身を主人公とした私小説)では片頭痛の苦しみがつづられています。
「のみならず僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?―と云ふのは絶えずまはつてゐる半透明の歯車だつた。
僕はかう云ふ経験を前にも何度か持ち合せてゐた。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまふ、が、
それも長いことではない、暫らくの後には消え失せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、―それはいつも同じことだつた。」
(芥川龍之介「歯車」より一部抜粋)
上記は「前兆を伴う片頭痛」です。
「前兆」はこの他に、手足のしびれを感じるようなものもあります。前兆を伴わない片頭痛もあります。
片頭痛の頭痛は「ズキンズキン」と脈を打つようで、体を動かすと悪化しますし、光や音を不快に感じるので
「布団をかぶって寝込んでしまう」のが典型的です。
現代では片頭痛には薬があります。
発作の頓挫薬
- 発作が起きた時に早く治す薬です。
- 発作を起こしにくくする薬です。
(月に2回以上or月に6日以上の発作の場合に推奨)
ガルカネズマブか、エレヌマブか、フレマネズマブを月に1回皮下注射。(新薬です。高価ですが、有効性は高いです。)
片頭痛には、生活習慣の改善も大切です。
片頭痛の誘発因子
これらを意識し、避けられるものはなるべく避けてください。
片頭痛でお困りの場合は、受診をお勧めします。
「なんでもなくはなく、命に危険がある頭痛」に気付くチェックポイント
一番気を付けるべきなのは「なんでもなくはなく、命に危険がある頭痛」です。
くも膜下出血、脳出血、髄膜炎など、これらの病気を疑う時のチェックポイントとして以下の3点があげられます。このような症状が出た場合は
すみやかに病院を受診しましょう。
危険な頭痛が起こる前に、脳ドックを受けて予防することもお勧めです。
当院健診センターでは、脳ドックをご用意しています。
詳細はお電話でお問い合わせください。
[健診センター]
【T E L】 0566-25-8182
【受付時間】 平日:8時~16時、第1・3土曜日:8時~13時30分
おわりに
対処を急ぐ時、急がなくてもよいときを理解し、頭痛に正しく向き合って、生活の質を上げてゆきましょう!
「医療の知恵袋 ~目で見る市民公開講座~」について、
閲覧いただきありがとうございました。
皆さんにとって、病気や健康を考える良い機会となれば幸いです。
(公開資料は2021年10月20日時点の情報です。)
コロナ禍でも、医療機関で必要な受診をしましょう
1. | 過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう可能性があります。 |
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