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2021年9月

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関節リウマチのおくすりのはなし
関節リウマチのおくすりのはなし

はじめに

関節リウマチは、免疫の異常によって関節の破壊が起こる病気です。

刈谷豊田総合病院リウマチ科の舟橋康治です。
今回は、100~200人に一人がなるという「関節リウマチ」という病気と、その治療薬についてできるだけ分かりやすく解説いたします。

関節リウマチってどんな病気??

関節リウマチは、免疫の異常によって関節の破壊が起こる病気です。



  • 関節リウマチは自己免疫疾患といわれる病気のひとつです。
  • 関節の滑膜という部分に炎症が生じて多くの関節に痛みや腫れが起こり、炎症が長期間続くと関節が変形し、日常生活にも支障をきたす病気です。

自己免疫疾患って?

健康な状態では免疫細胞は外界から体内へ侵入する異物(細菌やウイルスなど)を攻撃します。

免疫細胞が誤作動することにより自身の正常細胞を攻撃し破壊する状態が自己免疫疾患です。
特に関節に炎症を起こし、軟骨や骨を攻撃する自己免疫疾患が関節リウマチです。

免疫細胞とサイトカイン
サイトカインって?
細胞から分泌されるタンパク質であり、目的とする細胞(標的細胞)表面に存在する特異的受容体を介して、 細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現または抑制など多様な細胞応答を引き起こす生理活性物質の総称です。

病気になった免疫細胞が関節リウマチの原因となる何らかの物質(抗原提示細胞)と結合することで、免疫細胞は炎症性サイトカインを放出し、 関節にかかわる細胞(滑膜繊維芽細胞・破骨細胞・軟骨細胞など)に炎症を生じさせ、関節には痛みと腫れを起こし、 持続することで関節破壊が進みます。
(TNFα、インターロイキン1 ( IL-1 ) 、インターロイキン6 ( IL-6 ) などが炎症性サイトカインといわれ、関節リウマチに関与します。)
※関節リウマチの発症メカニズム(原因となる何らかの細胞について)は十分に明らかになっていません。

関節リウマチの診断方法

2010年にアメリカとヨーロッパのリウマチ学会合同で発表した分類基準を参考に診断することが一般的です。
(Aletaha et al. Arthritis Rheum.2010; 62:pp2569–2581)

【診断の一例】
いずれかの関節に関節滑膜炎が存在すること(滑膜炎が存在するすべての方が関節リウマチと診断されるわけではありません)。
リウマチ因子と抗CCP抗体が陽性であること(陰性であっても関節リウマチと診断される場合があります。リウマチ患者さん全体の約10%の方がリウマチ因子が陰性です)。
関節炎以外に肺炎や腸炎など、部位にかかわらず炎症には特徴的な反応が認められます。
炎症の四徴
熱感…炎症部位には熱っぽさが認められます(けがなどでも炎症は生じます)。
発赤…局所に赤みを帯びます(体内の深い部分で生じた場合はその赤みは確認できません)。
疼痛…主に安静時痛(じっとしていても痛む:神経痛との区別が重要です)や圧痛(押さえると痛む)。動作時痛は炎症による痛みでない可能性があります。
腫脹…局所が腫れて膨らみます。体内の深い部分では分からない場合があります。

関節リウマチで症状の出る関節の頻度

Harris ED Jr :Clinical features of rheumatoid arthritis.
Kelley’s Textbook of Rheumatology, 6th ed, pp967-1000,2001
Harris ED Jr :Clinical features of rheumatoid arthritis.
Kelley’s Textbook of Rheumatology, 6th ed, pp967-1000,2001

関節リウマチの治療の四本柱

2010年 リウマチ白書より

  • 以前より関節リウマチの治療は「基礎療法・薬物療法・手術療法・リハビリ」をバランスよく行うことが重要であるといわれてきましたが、 1999年のメトトレキサート(商品名:リウマトレックス🄬)の関節リウマチに対する保険適用と、 2003年に開始された生物学的製剤の国内販売を境に「薬物治療」にかかる配分が大きくなりました。 しっかり効果が得られれば関節破壊の進行は抑制され、手術やリハビリは必要とならない方が多くなり、 実際に関節リウマチに対する手術は減少しています。

基礎療法って?

  • 抽象的な概念で一定の見解はなく、さまざまな解説・説明がされていますが、 ひとことで表現すると“体調を整えること”です。 体調を崩してしまえば薬が飲めなくなったり、薬の副作用が出やすくなったりします。 身体の状態が悪ければ病気も悪い方向に向かいやすくなります。 また、精神的状態の不良も痛みの悪化や身体機能・活動の低下につながります。
  • バランスの良い食事をすること、十分な睡眠をとること、ストレスを溜めないこと、適度な運動をすることなど 具体的な行動に置き換えられることがあります。
  • 関節リウマチを発症させたり悪化に関連があるとされる歯周病や喫煙、腸内細菌叢のバランスの悪化など、 環境因子の改善に取り組むことなども推奨されています。

食事について

  • 明確な効果が示されているわけではありませんが…
  • 腸内細菌の調整は関節リウマチの増悪の抑制や、状態の安定に関与している。
  • 抗酸化作用と腸内細菌叢の安定に寄与している可能性がある菜食主義は有効かもしれない。
  • 魚、その他からの不飽和脂肪酸の摂取はリウマチの発症の抑制につながる。
  • ビタミンDは、自己免疫に影響して、特にRA疾患活動性を減少させることが示された。
  • と、報告があります。

Badsha H et al; Open Rheumatol J. 2018 Feb 8;12:19-28.

関節リウマチのおくすりについて

  • 抗リウマチ薬はDMARDs(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs:ディーマーズ)とも言われ、 大きくcsDMARDs、bDMARDs、tsDMARDsと3つに大別されます。

csDMARDs
以前より存在した内服の免疫抑制薬・免疫調整薬
主に病気になった免疫細胞に作用してその活動を抑えようとします。
bDMARDs
生物学的製剤とも呼ばれる点滴や注射のお薬
主に炎症性サイトカインに対して働きかけるお薬で(1種類は免疫細胞と抗原提示細胞との結合を妨げます)、 関節破壊の抑制に高い効果が証明されています。
tsDMARDs(分子標的合成抗リウマチ薬)
JAK阻害薬とも言われる、生物学的製剤と同等の効果を持つとされている内服のお薬
最も新しい世代のお薬で、内服のお薬で免疫細胞に働きかけてサイトカインの放出を抑えて bDMARDsと同様に関節破壊の抑制に寄与し、症状も速やかに改善させる効果があることが証明されています。


csDMARDs一覧

csDMARDsは免疫抑制剤と免疫調整剤に大別されます。


  • リウマチと診断されたら、治療ガイドライン上は服薬できない事情(合併症など)がなければリウマトレックス®を開始することが一般的で、 多くのリウマチ患者さんに服用されています。


  • 免疫調整剤にはリドーラ® ・シオゾール® ・オークル® ・モーバー® ・カルフェニール® ・メタルカプターゼ®などもありますが 開発が古く、最近開発された上記の薬剤のような効果が得られないものが多いため新規に処方されることはほとんどありません。

bDMARDs一覧①


  • bsDMARDsの中でも左側の5製剤はTNFαというサイトカインを抑えることからTNF製剤、右側の3剤はそれ以外ということで non-TNF製剤と分類されることがあります。投与形態が点滴のものと皮下注射のものがあり、 皮下注射は自分で注射が打ちやすいような構造になっています。それぞれの特徴の詳細は次で説明します。

bDMARDs一覧②


  • 発売順に並べてあります。一般的にTNF製剤はリウマトレックス®との併用効果が示されており、 併用が必須のもの、併用することで最大の効果を発揮することが知られています。
    一方でアクテムラ® ・オレンシア® ・ケブザラ®はリウマトレックス®を服用している集団と 服用していない集団で比較をして大差がないという結果を示しています。 関節破壊の観点からは併用が好ましいとされることが多いですが、リウマトレックス®が腎臓の病気や肺の病気で服用できない場合があるため、 そのような合併症を有する方に使用されることが多いです。
    どの薬剤が最適であるかは病気の状態や合併症の有無などで変わります。 投与形態(点滴・皮下注射)はいずれも同等の効果が発揮できるように用量設定されており、 ライフスタイルに合わせての選択になりますので、薬剤選定は医師と患者さんが協同して決定する必要があります(Shared decision making)。

tsDMARDs(JAK阻害薬)一覧①


  • 一番古いもので発売が2013年と非常に新しい薬であり、治療効果がbDMARDsに勝るとも劣らないという報告が複数あります。 リウマトレックス®などのcsDMARDsで効果が十分でない場合はこれまでbDMARDsが第2選択となっておりましたが、 最近では第2選択としてJAK阻害薬を選択する、というガイドラインの発表があり、治療の中に注射をしないという選択が増えることになりました。

tsDMARDs(JAK阻害薬)一覧②


  • 発売順に並べてあります。 一番最初に発売されたゼルヤンツ®は半減期(薬の濃度が半分まで減少するまでの時間)が短いため1日2回服用が必要となります。
    それぞれの薬で腎臓か肝臓か腸管で処理される割合が異なるため、腎臓の悪い人に適した薬、肝臓の悪い人に適した薬があります。 安全性を考慮して使用する薬剤を選択していきます。
    いずれの薬剤もbDMARDsと比較して帯状疱疹の発生頻度が高いとされるため、服用の際には注意を払う必要があります (帯状疱疹になった場合、早期発見・早期治療で後遺症を残す可能性は低くなります)。
    tsDMARDsはそれぞれ細胞内での作用が少しずつ異なります。細胞内でのサイトカインの抑制の割合がどのくらいか 研究で少しずつ明らかになってきていますが、患者さんごとに、どの薬剤が最適であるかを予測する方法はまだ分かっていません。


関節リウマチ診療ガイドライン2020
関節リウマチ診療ガイドライン2020

さいごに

1. 関節リウマチの診断は発症直後の場合、別の病気との区別に難渋する場合があります。
2. 関節リウマチと診断された場合はこの四半世紀で開発・発売されたさまざまな薬剤と、多くのリウマチ専門医の研究で治療法はかなりの精度で確立されてきています。
3. 完治という境地までは到達していませんが、寛解という(治療継続の状態で)症状が無く、生活に制限の無い状態まで回復される方も増えてきてます。
4. 寛解に到達するためには適切なタイミングで適切な薬物治療の選択が必要となりますが、合併症の問題や副作用の問題で期待通りの結果にならない場合もあります。
5. 医師と患者さんの協同決定(Shared decision making) でよりよい治療効果・結果を一緒に目指しましょう。

リウマチ科>

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「医療の知恵袋 ~目で見る市民公開講座~」について、
閲覧いただきありがとうございました。

皆さんにとって、病気や健康を考える良い機会となれば幸いです。
(公開資料は2021年9月18日時点の情報です。)

コロナ禍でも、医療機関で必要な受診をしましょう

1. 過度な受診控えは健康上のリスクを高めてしまう可能性があります。
2. コロナ禍でも健診や持病の治療、お子さまの予防接種などの健康管理は重要です。
3. 医療機関や健診会場では、換気や消毒でしっかりと感染予防対策をしています。
4. 健康に不安がある時は、まずはかかりつけ医・かかりつけ歯科医に相談しましょう。

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