医療の知恵袋
〜目で見る市民公開講座〜
2021年8月
2021年8月
はじめに
皆さん、こんにちは。刈谷豊田総合病院消化器内科の久野剛史です。
皆さんは普段、胸焼けに悩まされていませんか?もしかしたら逆流性食道炎の症状かもしれません。
今回は逆流性食道炎について、知っておいていただきたいことをはじめ、専門的な内容を少し織り交ぜながらお話ししていきます。
そもそも食道ってどこにある臓器なのでしょうか…。
食道とは
食道は、のど(咽頭)と胃をつなぐ筒のような臓器です。
長さは25㎝くらい、太さは3㎝くらいです。
食道は、口から食べた食べ物を胃に送る働きをしています。
食道と胃の境目には下部食道括約筋と呼ばれる筋肉があり、胃で作られる酸(胃酸)や食べ物が逆流することを防いでいます。
逆流性食道炎とは
胃酸が食道に逆流することによって、
・胸焼け
などの症状が出る病気です。
胸焼け以外にも
・のどや口が酸っぱく感じる/焼ける感じ
・吐き気
・食欲がない
・咳
などのいろいろな症状がでることがあります。
(意外に多い!)
逆流性食道炎の原因
高脂肪食、食べ過ぎ、喫煙 | |
これらは下部食道括約筋の圧が下がることにより、胃酸が食道に逆流します。 |
肥満・円背 | |
これらは腹圧が上昇することにより、胃酸が食道に逆流します。 |
食道裂孔ヘルニア | |
胃が食道側へはみ出すことにより下部食道括約筋の圧が低下し、胃酸が食道に逆流します。 |
その他にも、下部食道括約筋の圧を下げるような薬剤も原因となることがあります。
逆流性食道炎の診断
胃カメラで食道と胃のつなぎ目の部分を観察します。
そして、粘膜の炎症の広がりの程度で重症度を分類します(ロサンゼルス分類)。
逆流性食道炎の治療
生活習慣の改善 | |
まずは普段の生活の見直しから始めましょう。 ・肥満の方は減量をしましょう。 ・禁煙をしましょう。 ・早めに夕食を取りましょう(遅くても就寝2時間前には食事を終えましょう) ・就寝時、頭の位置を少し高くしましょう。 |
薬の内服 | |
主に胃酸を抑える薬を内服します。 |
手術 | |
お薬の内服でも良くならない場合は手術を考えます(逆流を阻止する手術)。 |
【参考】Barrett食道(バレット食道)
Barrett食道とは、胃酸などが食道に逆流することによって、胃から食道に連続して伸びる円柱上皮(粘膜の一種。Barrett粘膜と呼ばれる。)が存在する食道のことです。 | |
Barrett食道は、全周性で長さが3㎝以上の場合がLSBE(Long Segment Barrett's Esophagus)、それ以外が(Short Segment Barrett's Esophagus)と分類されています。 | |
LSBEはがんの発生リスクとなります。 | |
逆流性食道炎のうち、LSBEの方は1%以下です。 | |
さらにLSBEの方が発がんする頻度は年率1.2%程度です。 |
つまり、頻度として稀ではありますが、逆流性食道炎によりLSBEを認めた場合、発がんに気を付けて経過観察する必要があります。
【参考】胸焼けをきたす逆流性食道炎以外の病気
胸焼けをきたす病気は逆流性食道炎だけではありません。以下のようなさまざまな病気の可能性もあります。
機能性ディスペプシア…症状はあるが検査では異常がない、胃のはたらき(機能)が悪くなる病気 | |
胃潰瘍、十二指腸潰瘍 | |
食道がん、胃がん | |
食道運動障害(食道アカラシアなど) | |
狭心症、心筋梗塞 |
よって、胃カメラを行って逆流性食道炎以外の病気がないかチェックしたり、場合によっては循環器内科医にも診てもらいましょう。
まとめ
胸焼けなどが気になったら胃カメラを受けましょう。 | |
逆流性食道炎の治療は、内服薬だけでなく生活習慣の改善も重要です。 | |
胃カメラでLSBE(Long Segment Barrett's Esophagus)と診断されたら、がんがないか定期的に胃カメラで経過を診ていきましょう。 | |
胸焼けをきたす他の病気の可能性も考えましょう。 |
「医療の知恵袋 ~目で見る市民公開講座~」について、
閲覧いただきありがとうございました。
皆さんにとって、病気や健康を考える良い機会となれば幸いです。
(公開資料は2021年8月20日時点の情報です。)
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