従来の胸腔鏡手術は、胸に1~2cmの穴を3カ所(1カ所の傷は肺を取り出すために2.5~3.5cm切ります)開けてカメラや鉗子を挿入し、モニターを見ながら処置を行います。開胸手術に比べて傷が小さくなります。しかし、胸腔鏡に用いる鉗子は真っすぐな棒状であり、操作性や可動域に限りがあります。
ロボット支援胸腔鏡下手術(保険診療)
ロボット支援胸腔鏡下手術(保険診療)とは?
呼吸器外科では、2018年に原発性肺がんに対してロボット支援胸腔鏡下手術を開始して以来、症例を積み重ねています。
ロボット支援手術は、胸腔鏡手術のひとつで術者がロボットをコントロールしながら行う低侵襲手術(患者さんの体への負担が少ない手術)のことです。体に約1.2cmの小さな穴を5カ所開けます(1カ所の傷は肺を取り出すために3.5cm程度)。胸腔鏡と同様にモニター画像を見ていますが、ロボット支援手術では術野を10倍に拡大し、立体的に見える3Dカメラを使用し、手ぶれのない多関節鉗子を用いるため、手術の正確性が高いのが特徴です。
前縦隔腫瘍に対する剣状突起下アプローチについて
前縦隔腫瘍(主に良性腫瘍、比較的早期の悪性胸腺腫)に対して行います。剣状突起下に約3cmの横切開、左第6肋間に1カ所(1.2cm)、右第6肋間に2カ所(1.2cm)の創で、CO2を7mmHgで送気して術野を確保して行います。本手術で最もポイントとなる左腕頭静脈や内胸静脈周囲の操作がより安全、正確に行えます。
対象は?
・肺悪性腫瘍(原発性肺がん・転移性肺がん)
・肺良性ならびに炎症性腫瘍(2024年6月より保険適応)
(肺腫瘍に対しては、肺葉切除術、肺区域切除術の術式が保険適応)
・縦隔腫瘍(悪性、良性)
・重症筋無力症に対する胸腺摘出術
保険適応は上記ですが、患者さんの症状に合わせた手術を行うため、全ての患者さんにロボット支援胸腔鏡下手術が適応できるわけではありません。
実績は?
呼吸器外科では山田、雪上の2名がロボット支援手術実施の認定資格を有しています。
2018年12月の開始から2024年3月まで、原発性肺がん約130例を含め、全体で約170例のロボット支援胸腔鏡下手術を行っています。
効果は?
- ・出血が少ないです。
- ・痛みが軽減され、体への負担が少ない分、術後の回復が早く、早期の社会復帰が望めます。
- ・多関節鉗子であるため、人の手や従来の胸腔鏡鉗子では不可能な動きが可能となり、より精密な手術が行えます。
- ・鉗子の動きに手ぶれがなく正確なので、組織の損傷や合併症を低減できます。
入院期間・費用は?
入院期間の目安、および1割負担の方、3割負担の方の自己負担金額は以下のとおりです。
手術内容 | 入院期間 | 自己負担金額(1割負担) | 自己負担金額(3割負担) |
---|---|---|---|
開胸 | 7日 | 6.8万円(食事代含む) | 55万円(食事代含む) |
胸腔鏡下手術 | 7日 | 6.8万円(食事代含む) | 61万円(食事代含む) |
ロボット支援下手術 | 7日 | 6.8万円(食事代含む) | 61万円(食事代含む) |