胸腔鏡下肺区域切除術とは:
早期の肺癌が発見されることが増加し、根治的縮小手術として肺区域切除術が行われる頻度が増加しています。
図3aは左肺上葉に肺がんが存在。図3bのオレンジ線で示す左上大区を切除する術式を選択。区域間を同定する方法としてICG蛍光内視鏡システムが導入されており、静脈注射によりICG蛍光法で区域間を同定しました。
胸腔鏡下手術とは、直接胸腔内を目で見る代わりに胸腔鏡を介してモニターに胸腔内を映して行う手術を指します(図1)。1910年にスウェーデンのJacobaeusがCytoscopy (膀胱鏡)を用いて結核による胸膜癒着の診断を行ったのが、胸部疾患に対する胸腔鏡手術の始まりです。1973年にはフレキシブル胸腔鏡を用い自然気胸の治療に使われるようになり、1980年代になって内視鏡とビデオ光学機器が飛躍的に進歩して手術機器と器具の開発も進み一般的となりました。当科では2008年から適応を拡大し肺がん症例に対しても胸腔鏡下手術を行っています。
現在ではモニターはハイビジョンとなり、4K解像度、3DカメラやICG蛍光内視鏡システム、3Dカメラを用いたロボット手術などが導入されつつあります。胸腔内を観察し易くするためにCO2送気を使用する場合、1カ所の傷のみで行う単孔式手術も行われています。
対象は、呼吸器外科手術全般(原発性肺がん、転移性肺がん、悪性縦隔腫瘍(胸腺腫など)・良性縦隔腫瘍、重症筋無力症、自然気胸、膿胸、感染性肺疾患(肺結核・非結核性抗酸菌症・肺真菌症など)、良性胸壁腫瘍、肺良性腫瘍、多汗症、肺生検目的)です。大きな肺がん、胸壁切除、大血管合併切除、びまん性悪性胸膜中皮腫などは開胸術が必要になります。
利点は、胸腔鏡と鉗子を入れる小さい傷だけで済むことと、術後の痛みが少ないことです。
また、近接拡大効果で術野が肉眼で見るよりも詳細に見ることができます。
早期の肺癌が発見されることが増加し、根治的縮小手術として肺区域切除術が行われる頻度が増加しています。
図3aは左肺上葉に肺がんが存在。図3bのオレンジ線で示す左上大区を切除する術式を選択。区域間を同定する方法としてICG蛍光内視鏡システムが導入されており、静脈注射によりICG蛍光法で区域間を同定しました。
胸腺の良性腫瘍、早期の悪性胸腺腫、重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術が適応となります。図4の如く剣状突起下の腹壁に3cmの横切開を加えます。同部にGelpoint®を装着し胸腔鏡、鉗子2本を挿入し手術を行います。縦隔内にCO2を送気し、7mmHgの圧をかけ視野を確保します。手術創が1カ所で済むため整容性と術後の痛みに関して有利です。
手術費用と入院期間の目安、および1割負担の方、3割負担の方の自己負担金額は以下のとおりです。
項目 | 入院期間 | 手術費用(入院費含む) | 1割負担者 | 3割負担者 |
---|---|---|---|---|
自然気胸 | 4日 | 95万円 | 5.76万円 | 29万円 |
縦隔悪性腫瘍 | 5日 | 110万円 | 5.76万円 | 33万円 |
肺がん | 8日 | 200万円 | 5.76万円 | 60万円 |