泌尿器科では、腎がんに対して2016年4月から保険診療として認可されたロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を実施しています。
腎がんは、以前は片方の腎臓を全て摘除する腎摘除術が行われていましたが、現在は約4㎝以下(小径腎がん)の単発腫瘍であれば部分切除が行われるようになっています。
小径腎がんの治療成績は【5年生存率:95%以上】といわれます。腎臓を全て摘出した場合には腎臓の全体の働きが落ちたり、将来の心臓病発症の割合が増えたりすることから、部分的に病巣のみを除去することで全摘除と変わらない治療成績であるといわれています。
腎部分切除術には以下の方法があり、①ロボット支援手術が最も優れているといわれています。
ロボット支援腎がん手術(保険診療)
ロボット支援腎部分切除術(保険診療)とは?
- ロボット支援手術
- ロボットを用いない手動の腹腔鏡下手術
- 開腹手術
ロボット支援手術では、腎動脈の血流をいったん止めて腫瘍を切除します。開いた腎実質(腎臓の実質的な働きを担う部分)や腎杯・腎盂(尿の流れる所)を縫い合わせて止血します。止血後、腎動脈の血流を再開させて腫瘍を摘除します。
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切除範囲の決定と腎動脈の遮断
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腫瘍切除
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ロボットを用いた腎縫合
対象は?
転移のない小径腎がんの方です。原則は腫瘍が4cm以下の方が適応ですが、5~6cmでも可能な場合があります。
術前画像診断で悪性の可能性が高い方が適応で、良性腫瘍が疑われる方は適応になりません。
実績は?
2016年度 8例
2017年度 15例
2018年度 21例
2019年度 12例
2020年度 22例
(2021年3月31日現在、手術件数78件)
効果は?
ロボット支援の長所から期待される効果は以下のとおりです。
- 画像で拡大した術野を見ながら手術操作が可能で、腎血管の剥離操作を丁寧に行うことができます。
- お腹に炭酸ガスを入れて手術を行うため、開腹手術と比べて気腹圧による止血効果があり、術中出血量が減少します。ロボット手術では他人の血液を必要とする輸血の確率は5%未満とされています。
- 術後の回復が早いといわれています。大多数の人が手術後2日目には自力で歩くことができます。また、手術翌日には食事や流動物をとることができます。
- 開腹手術やロボットを用いない手動の腹腔鏡下手術と比べて、①腎臓の血流を止めている時間、②腫瘍がきちんと取り除ける割合(断端陰性率)、③合併症のない割合の3つの目標達成率が優れているといわれています。
入院期間・費用は?
手術費用と入院期間の目安、および1割負担の方、3割負担の方の自己負担金額は以下のとおりです。
2016年4月から保険診療として認められていますので、手術費を含めた入院費は健康保険の適用となります。
腎がん手術内容 | 入院期間 | 手術費用(入院費含む) | 1割負担者 | 3割負担者 |
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腎悪性腫瘍手術 | 12日 | 122万円 | 5.76万円 | 38万円 |
腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術 | 9日 | 125万円 | 5.76万円 | 41万円 |
ロボット支援腎部分切除術(ダヴィンチ) | 9日 | 150万円 | 5.76万円 | 45万円 |